道州制中間報告

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報道によりますと、13日に、
自民党の道州制調査会の中間報告がまとめられたそうです。
8?10年後をめどに、現行の都道府県制度を廃止して、
道州制に完全移行することを目指すもののようです。
東京と埼玉との都県境
この写真についての説明は、もっと後に致しましょう。

NIKKEI NETの該当記事はこちらです。
ウェブ魚拓によるキャッシュはこちらです。

う?ん、道州制ですかぁ…。
個人的には積極的に支持する理由が思い当たらない、
というか害の方が多いとしか思えないのですが…。
熊本市が道州庁所在地になれるような区割りをしてくれたら、
地域エゴの観点から、賛成してやってもいいけど…。

賛成論者の人が、何のために道州制を導入しようと考えているのか、
きちんと把握できてないのですが、
仮に地域振興のためにやろうとしているのだとしたら、かなり疑問です。

現47都道府県から4都道府は別にして、県庁所在地43市のうち
道州庁所在地になれるのは多くて10市くらいでしょう。
その他の三十数市は、道州庁がなくとも繁栄しうる経済集積のある
少数の例外(横浜市・神戸市・さいたま市とか?)を除き、
壊滅的な打撃を受けると思われます。
#逆をいえば、北海道をいくつかの県に分割して、
#例えば札幌以外の地方裁判所所在地である
#旭川・函館・釧路あたりを県庁所在地にすれば、
#これらの都市は、もう少しは発展しうるように思えます。
#もっとも、その場合、他の支庁所在地がさらに寂れる
#という問題はあるでしょうが。

かかる道州制の弊害の大きさたるや、
「東京一極集中」の害とは比べ物にならないでしょう。

特に、ブロック(ないし、その一部地域)の拠点機能を
分担しているような所は、道州庁の誘致に失敗した時の打撃が
さらに深刻でしょう。

一例を挙げて、熊本市の場合です。

仮に「九州」などという大雑把なくくられ方をして、
道州庁が福岡にでも持って行かれたと仮定します。
#個人的には、「九州」などというくくり方は、
#青森から福井・三重までを「東本州」としてくくるのと、
#同程度に感じるのですが…。

すると、現在は熊本市に置かれている
九州を管轄する国の出先機関である、
九州農政局や九州総合通信局は、
はるか北の方へ移転することになるでしょう。
九州南部を管轄する九州財務局や熊本国税局も、それぞれ
福岡財務支局や福岡国税局に吸収されかねません。
#さすがに、福岡財務支局は改称すると思うけど。

であれば、監督官庁の出先機関の立地に合わせる
親方日の丸系な団体・企業も、同様な行動に出ます。
であれば、今まで熊本に出張してきたビジネスマンも福岡へ行き、
そういうビジネスマン相手の仕事をしている業種がさびれて、
そういう業種の従業員(と家族)を相手に仕事してる業種が…。

あぁ、恐ろしや。

「広域行政の必要性」とか言ってる人もいるようです。
まぁ確かに、南関東では、都県境を越えて通勤通学してる人が多いです。
先ほどの写真、
東京と埼玉との都県境
そう、この写真は、東京都練馬区と埼玉県和光市との都県境です。
写真の真ん中の道路の、左側は東京で、右側は埼玉です。
こういう地域では、都だの県だのと分断するのは、
あまり合理性がないのかもしれません。

ですが、熊本あたりだと県より広い範囲の「広域行政」の
必要な分野なんて、あまりないように思えます。
まぁせいぜい高速道路と新幹線の建設くらいですか。
ですから、「広域行政の必要性」を言うのなら、道州制ではなく、
南関東など一部地域の都府県の統合によるべきでしょう。

地域住民の一体性の見地からも、
県外の私立の中学・高校に行く少数の人々のことを
熊本では「留学」と言ったりするように、
県外を外国に準じて扱う場合すらあります。

そういえば、司馬遼太郎は、熊本と鹿児島の県境の標識を
ヨーロッパの国境の標識みたいだと評してます。
つまり、『街道をゆく』文庫版第3巻
『陸奥のみち、肥薩のみち ほか』の149?150頁には、
>路傍に、石造の碑のようなものがあった。
>車から降りて近づいてみると、碑というには構造が複雑で、
>ヨーロッパの国境標のような姿をしていた。
>目をさらに近づけてみると、
>「県境」
>という文字が深く刻まれている。
>その中心碑に両袖が出ていて、むかって左が「熊本県」とあり、
>むかって右が「鹿児島県」とあった。
     (中略)
>肥後と薩摩というこの国境の歴史の重さは、
>いまなおこの舗装道路の路傍で生きているのである。
という記述があります。

ただ、熊本市民でも毎月のように福岡へ行く人もいるらしいし、
熊本市の通称「シャワー通り」に、流行の最先端の服を買いに
福岡から来る人もいるらしいです。
#新しいトレンドの服は、まず熊本で売って、次に東京で売って、
#それから全国展開する、んだそうです。
でも、熊本県民たる私の両親は、
福岡市へは十年に一度も行ってないのでは。
#東京へ鉄道で行く時の博多乗換とかを入れれば
#もう少し多いかもしれませんが。

だから、まぁ、その辺の感覚は個人差があるのは確かですが。

それはそうと、福岡市と北九州市は、
確かに地理的には関門海峡の九州側にあるけど、
社会的・経済的には、東海道・山陽新幹線沿線ということで、
もはや「本州」の一部ないし「本州」の飛び地みたいに
考えた方がいいのではないか、
と思うのは私だけでしょうか?
#熊本市を九州最大の都市にするために、
#「九州」の定義から、福岡市と北九州市を除外するべし、
#という地域エゴもあるにせよ、
#東海道・山陽新幹線沿線と、それ以外との、
#違いは無視しがたいのでは。

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このページは、村瀬 泰一が2007年6月15日 23:27に書いたブログ記事です。

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