村瀬 泰一 どっとこむ

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2007年3月26日 21:44における投稿のページです。

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代理母訴訟

先日、23日のことだそうですが、最高裁判所(の第二小法廷)で、
向井亜紀・高田延彦夫妻の間に代理出産によって生まれた双子の
出生届を受理するよう求めた裁判で、
出生届の受理を命じた東京高裁決定が破棄され、
不受理を適法とした東京家裁決定が確定したそうです。


日経トレンディの該当記事へのリンクを張っておきます。
ウェブ魚拓によるキャッシュはこちらです。

この最高裁決定によると、
「現行民法の解釈では、卵子を提供した女性と子の間の母子関係は
認められない」のだそうです。

決定理由の中で、
「親子関係は単に私人間の問題ではなく、公益に深くかかわる問題。
明確な基準で一律に決められるべき」と指摘した上で、
「現行民法では、出生した子を懐胎・出産した女性を
母親と解さざるをえない」と述べたそうです。
#この最高裁決定が、理由中で親子関係を
#「単に私人間の問題ではなく、公益に深くかかわる問題」としたのは、
#どうですかね。公益と関わるとしても、
#第一次的には私人間の問題と思いますが、それはさておき、...。

確かに、現行民法の伝統的解釈として、
母子関係は原則として分娩の事実によって発生する
と解されているようです。
しかし、実は、法の明文規定があるわけではありません。

つまり、非嫡出子と父との父子関係が
認知(779条)によって発生するのと異なり、
母子関係は分娩の事実によって発生するというのは、
法で定めるまでもない、当然のことと考えられていたようです。
昭和37年4月27日の最高裁判例(民集16-7-1247)も
そうした立場に立って、非嫡出子と母との母子関係は
認知をまたず、分娩の事実によって発生するとしています。

確かに、民法制定当時や昭和37年判決当時は、
分娩した女性が遺伝上も母親であると考えるのが合理的だったのでしょう、
というか、代理出産などの特殊な場合を除いて、今でも合理的でしょう。

ですが、立法論ないし道徳論になるかもしれませんが、個人的には、
親子関係は遺伝的連続性を基準にすべきだと思います。

唯一の例外が養子制度で、これは現実の必要性に応じて
親子関係にない者の間に法が親子関係を擬制する制度と、
個人的には認識しております。
#個人的には、養子制度の必要性にも、疑問があるのですが、
#現に養子制度が用いられる以上、かかる制度を
#必要とする人も、世の中にはいると考えるべきでしょう。
#だからといって、養子の法定相続分が、実子たる非嫡出子の
#2倍というのは、ちょっと変だと思いますが、それは別の機会に...。

養子の話はさておき、代理出産の母子関係の話に戻りますが、本当は、
分娩した女性が遺伝上も母親であると「推定される」とした上で、
分娩した女性以外の女性が遺伝上の母親であると認められる特段の事情
(分娩した女性以外の卵子提供者の存在など)が証明されれば、
遺伝上の母親との間に法的な母子関係を認める、
というような扱いをできれば良い、と個人的には思います。

ですが、かかる取扱いを禁止する明文規定はなくとも、
かかる取扱いを根拠付ける明文規定もない以上、
立法機関ならざる裁判所としては難しいのでしょう。

そこで、今回の最高裁決定が現行民法の伝統的解釈を踏襲したことは、
司法権の制約上やむを得なかったのかもしれません。
#逆に、高裁決定は、妥当な結論を導くために、
#法律論としては、ちょっと強引な感じがありました。

つまり、母子関係の基準について明文規定をおかなかったことは、
立法当時はともかく、今となっては、
「法の不備」ないし「法の誤り」であるといわざるを得ず、
今回の最高裁決定の結論において不当なものとなったのは、
司法機関たる裁判所の問題というよりは、
立法府の懈怠によるものと考えるべきでしょう。

その点については、本件の最高裁決定も、
「医療法制や親子法制の両面にわたる検討が必要で、
立法による速やかな対応が強く望まれる」と言及したそうです。

ですが、「法の誤り」の前には、司法がいかに無力かを
見せつけられた、という意味でも不愉快な事件でした。

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